ずんだもんと見る底辺個人バーチャルYouTuber

２０２２年７月。
わたしは味噌ノ国から遠く離れた異国の地、
バーチャルAOMORIに飛ばされていた。

田んぼや畑すらない雑草生い茂る土地で途方も暮れていると、
遠くから、青森ナンバーの車がやってきて、私の前に停車し、中から一人の男性が現れた。

その人物はＨ君といって２０１８年１１月にVtuberとしてデビューし、
１２月生まれのわたしに先輩としてとても優しく親切にしてくれた大切な元仲間であった。

Ｈ君は、元々はとてもVtuberが好きだったはずなのだが、
個人Vtuberとして活動する中でVtuberそのもの嫌気がさし、
引退という形でその生涯に幕を閉じ、周りとの交流も止めて界隈から離れた。
今ではTwitterで『Vtuber』という単語をミュートするほどになっているらしい。

そんな彼が青森に住んでいるという情報を手に入れたわたしは、
さっそく連絡を取り直接会うことに成功し、久しぶりに会話をした。
もう最近のVtuberのことなんかお互い全く分からない。
２人が共通して見ているものは「ずんだもん動画」であった。

思い返せば我々がVtuberという文化にハマったころ、
様々なクリエイターが、Vtuberという媒体を使って面白い動画を出していた。
毎週のようにYoutubeに投稿される突飛な発想、磨かれた技術、夢と希望にあふれた情熱が詰まった動画たち。
それによって我々の心は突き動かされてVtuberという世界にのめり込んでいったのだ。

もちろん今の個人Vtuber界隈に当時のキラメキのようなものがあるはずもなく、
２０１８年ごろにデビューした個人Vtuberの多くは惰性で生きているだけのように見えていた。

そんな我々にとって、２０２２年に突如現れたずんだもんブームはとても眩しく映ったのだ。

だがしかし、バーチャルYouTuberというものに絶望しているH君とは対照的に、
わたしはまだ、諦めていなかった。
『うさ耳帽子のるいかちゃん』というコンテンツが秘めてるポテンシャルをわたしはまだ出し切れていない。
まだやりたいことがたくさんある。

『うさ耳帽子のるいかちゃん』はこんな中途半端では死にはしないぞ……と。

日も暮れてきたことだし、これ以上話してもVtuberの悪口しか出てこなくなりそうだと感じ、
そろそろ帰りましょうかという流れになったとき、突然Hくんが奇声を上げた

「ムックル最強！　ムックル最強！」

何が起きたのか分からなかった

「ムックル最強！　ムックル最強！」

頭がおかしくなりそうだった

「ムックル最強！　ムックル最強！」

だがわたしは、その言葉を知っていた。

「ムックル最強！　ムックル最強！」